しばらくすると、どこからか歌声が聞こえてきた。

それは女の子の声で、けして上手いとは言えないが 何故か気になってしまう。

歌声が聞こえる病室のドアからこっそり顔を覗かせる。

中には白い肌に、長くてきれいなブロンドの髪の女の子の姿があった。

年は同じくらいだろうか。

彼女は少年の視線に気がつくと、歌うのを止め不思議そうな顔をしながら彼を見つめる。

「Who are you…?」
(だぁれ…?)

「カイ…」

「Kai? Funny name」
(カイ?おもしろい名前ね)

学校では日本人の血が入っていることや、二つ名前があることの説明が煩わしくて

“ケヴィン”の名前を使っているのに、咄嗟に“甲斐”と名乗ってしまったことにやや後悔する。

話題を変えようとさっき耳にした歌のことを尋ねる。

「I don't know, but heard Jailer singing」
(知らないわ。ジェイラが歌っていたの)

「Jailer…?」
(ジェイラ…?)

友達なのかと聞くと、意外な返事が返ってきた。

「Another me」
(もう一人のあたし)