物凄い音がして、目を開けると踊り場… で、横たわる甲ちゃんの上にいた。

「ってー… 絹、頭打ってない?」

と、自分の頭をさすりながら、上体を起こす甲ちゃん。

あたしの身体も支えながら起こしてくれる。

「…っ!?」

「ん?」

でも気がついちゃった…

「…甲ちゃん、ごめんね。あたしのせいで」

下科医として大事なそれは無惨にも赤く染められていた。

よりによって珍しい血液型だから、もし止まらなかったらどうなるの?!

「あ~、やっちゃったみたいだね。こりゃ大変だ」

腕をかばう甲ちゃんの反応は意外にも冷静で、

普段から血を見慣れてるからかもしれないけど、全く大変そうに聞こえない。

それどころか反対側の大きな手で頭をわしゃわしゃ豪快に撫でられる。

「心配しなくて大丈夫だよ。水も滴るなんとかってヤツでしょ」

滴っているのは血ですが?

「ばかぁ… あたしのために無茶しないでよ」

「きっと無茶しちゃうのが医者ってもんなんだよ」

それは違う、甲ちゃんだからだよ…

溢れ出した様々な感情や涙で顔はもうぐしゃぐしゃ。

泣き顔見せちゃうのはこれで何回目だろう。

でもその度に涙を拭ってくれるのも甲ちゃんで、

悔しいけど 貴が言う通り好きになっていたのかもしれない。

もう手遅れだというのに…