「あいつら、一人の女の子を奪い合いしてるんだって」

貴の代わりに悠耶さんが答える。

「…?」

そんな子がいるんだ…

二人のイケメンから好かれるなんてすごい幸せ者だなぁ… あれ?

甲ちゃんは椎名先生じゃなかったの?

もしかして貴まで一目惚れ…?

同性のあたしでもあのオーラにやられたもん、ありえる。

それで日向家兄弟仲がギクシャクして溝が深くなっちゃって確執が…

「なわけねーし。帰る」

あたしの考えてることが伝わったのか、貴は帰ってしまった。

女の子並にデリケートと言うか… 沸点低すぎ。

「何しに来たのよ、あいつは…。

それで絹ちゃんはどっちを引き取ってくれる?どっちと花火見たい?」

「え…?」

「長男はヘラヘラしてるし、次男はキレやすいし どっちも育て方間違えちゃって訳あり品なんだけどね」

話の意図が分からず首を傾げるあたしにママがしらけた顔をする。

「“兄弟喧嘩の発端になった女の子”はどっちを選ぶかって聞いてるの。

気が付きませんでしたなんて言ったら怒るわよ?」

「…?!」

突然のそれは微熱状態のあたしにはどんな薬や注射よりもとてつもない衝撃を与えるものだった。

そんなわけない

そんなわけない…

あたしはお兄ちゃんのこと…