「ここまで絹ちゃんに言わせて… あんたも医者の前に男でしょう!」

“もう一人のママ”の気持ちは嬉しいけど、それ以上は傷口に塩でしかない。

本当“あの指輪”のことさえ聞けたら、どれだけ気持ちが軽くなることか…

「…あ!これ 割と近くていいんじゃない?」

お隣の親子の口論を他所にママが喜々として声を上げる。

もしかして、わざと止めに入った?

…まさかそんなわけないか、良くも悪くも自分のペース崩さないもんね ママは。

いや、それはここにいる人みんなそうだ。

そしてノック音がして“残り一人”が入って来る。

彼もそれは例外ではない。

「…まぢ?全員集合かよ」

「考えておくけど、期待はするなよ…」

貴と入れ違いに甲ちゃんが部屋を後にする。

気のせいか、何だかよそよそしい。

「…けんか?」

貴に尋ねてみるが、怪訝そうな顔をされる。

聞くなってことね…