あれが噂で聞いちゃった指輪…?

見たくなかった、気が付きたくなかった。

こんな時だけ洞察力が冴えてしまう自分がつくづく嫌になる。

近くにいると思っていた甲ちゃんが急に離れて行っちゃったみたい…

「カテーテルもよく頑張ったね… 傷増やしちゃって悪いけど、様子見て熱下がらなかったら解熱剤も入れるね」

…相変わらず鈍過ぎる。傷ついたのは腕じゃなくて“心”の方だよ。

モデルもやれちゃうくらいの容姿だし、優しいし、頭の回転早いし、

英語はペラペラなのに漢字はボロボロだし、変な薬(キャンディ)飲ませるし、パパさんのこと許してるはずなのに

素直じゃないし、未だにあたしのパパとの思い出大切にしてくれてるし…

あたしだけしか知らないはずの甲ちゃんが全部取られちゃうみたい。

寝たふりをしてその夜はやり過ごしたものの、翌日も体調は完全には戻りきらなかった。