「…日向先生は絹香ちゃんのことが好きなんじゃないですか?」

誰…?

身体がだるくて、声を出すどころか目も開けられない。

「医者と患者ですよ。それ以上でもそれ以下でもない」

大切な何かが音を立てて崩れていく気がした。

こんなの聞きたくない!

お願い、夢なら覚めて!

そうじゃないんなら…




「…ぬ、絹、大丈夫?」

目を開くと、そこには甲ちゃんの姿があった。

白衣じゃなくて私服の、あたしのよく知る彼の姿が。

「ハァハァ… こぉ ちゃん…」

火照った頬に置かれた手が冷たくて気持ちいい。

「うなされてたけど、怖い夢でも見たの?」

夢…? いや、そんなわけはない。

あたしはあれから熱を出してしまったらしく身体が熱くて、息もしづらい状態が続いた。

心臓が弱いあたしの場合、風邪をひくのも命取りなのに。

貴と勝手に病室出た罰なのかな…

「なんで きょう… ハァハァ…」

苦しくて、話もしづらい。

「いいよ、ゆっくりで」

「こぉ ちゃ… いなかった の… ?」

「あ~、それか…」

甲ちゃんは苦笑いしながら頭を掻いてみせる。