だけど十年以上経つんだよ、お兄ちゃんへの想いは並大抵なものじゃない…

彼がお医者さんになるまでは生きるんだって嫌な治療も耐えてきた。

その前に手術を受ける決断したのもせめてお兄ちゃんにもう一度会いたいから…

なのに あたしが本当に好きなのは甲ちゃんなの…?

「一緒に寝たり、ハグしたり一通りのことは済ましてんじゃん」

貴は参考書を横目にぼやく。

「誤解を招くような言い方しないでよ…」

確かに“一緒の部屋で”寝たことも、“発作を起こした時に”抱かれたこともあるけど、

あのドキドキやキューンが“好き”ってことなの…?

まさかね… ただの不整脈だよ、きっと。

だけど仮にこれから先 誰かのことを好きになっても、決して言葉にはしないし

まして付き合ったりなんかしないって心に決めていた。

いつか孤独や絶望という尾びれを残して消えちゃうあたしが希望なんて持っちゃダメだ。

“誰か”を傷つけると分かっていながらの恋なんかしない…!

そう思っていたんだ、この時までは。