「そっか… そうだったんだ…」

そう呟くのが精一杯だった。俯いた頭は暫く上を向けそうにない。

「絹…」

甲ちゃんの呼びかけに首を振って答える。

謝られたくない。だってパパも甲ちゃんも悪くはないのだから。

でもこの気持ちはどこにぶつければいいんだろう…

院内用携帯電話が鳴り響き、甲ちゃんは病室を後にした。

「恒兄てさ…」

隣で同じように俯いたままの貴が口を開く。

「すっげー親バカだったんだ。お前にベタベタしすぎでさー…」

…ケンカ売ってる?じゃなかったら、親子まとめて侮辱してる!?

思わず、顔を上げて貴を睨む。

「兄貴はさっき言わなかったけど、恒兄は最期 あいつにお前のこと託したんだって。

『何かあったら絹香のことを守ってくれ』って」