嘘でしょ…


今まで助けてくれたのも全て、同情からだったの…?


まるで心にぽっかり穴が空いたような、目に映るものすべてが真っ暗に塗り潰されたような、

味わったことのない淀んだ気持ちに心が支配される。

「…俺が帰国して日本に滞在している間も父親みたいによく遊んでくれた。

あの日は夜勤明けの恒兄と駅で待ち合わせて、バスケの大会を見に行く予定だった。

でもその日に限って、地下鉄火災が起こって 俺たちは幸い巻き込まれなかったんだけど、責任感が強い恒兄は

救急隊の人達と治療に当たってた。もちろん俺との約束はキャンセルでね…」

甲ちゃんから語られる初めて聞く真実に胸が締めつけられる。

「じゃあ、パパは何で…?」

「駅構内にも動けない人がいることを聞いて、恒兄は中に入って行ったんだ。

一人取り残されるのが怖かった俺も反対を押し切ってついて行った。

でも結果、それが悪かったんだな…

落ちてきたがれきから俺を守ろうと庇ってくれた恒兄も怪我を負った。

大丈夫だからって処置に当たってるから俺も気がつかなかったけど、

他のドクターが来た時その場に座り込んで…」

「…!!」

「『夜勤明けで疲れたから眠らせて』なんて言ってね。

俺にもショックを与えないように薬品を打って眠らせて…

だから俺が恒兄がいなくなったのを知ったのも運ばれた病院のベッドの上だった」