「…え?」

「幼稚園の時さぁ、家族参加型のイベントが嫌いだったんだ。

うちはオヤジはアメリカだし、悠耶は仕事なのは理解してたけど、

よその家族団欒見るとガキだからやっぱり寂しくて。

んで、それを見かねた恒兄が休み合わせてくれて何度か父親代わりしてくれたってわけ」

そう言って貴はあの写真のページを開く。

「甲ちゃんから聞いたんだ…?」

「おう。朝帰ってきた途端、イロイロ物色してると思ったらアルバム見て感慨深気だったから」

そういえば、パパの話をすると時々甲ちゃんの表情が曇る。

「ねぇ、パパと甲ちゃんて仲良かった?」

「あの誰にも懐かない兄貴が唯一、心開いてたのが恒兄だった。

だから恒兄が亡くなったショックもデカイんじゃね?」

記憶にないパパの素顔がどんどん明らかになっていく。

それは嬉しいことでもあるが、一方で自分だけが取り残された悔しさも少なからず感じていた。

「…貴はパパの事故のこと知ってたりする?」

一瞬、間が空いた後 貴は難しい顔をして口を開いた。

「それを知って、お前は幸せなわけ…?」