「…ぬ …絹!」

目をゆっくり開けると、甲ちゃんの腕の中にいた。

奥には今にも泣き出しそうな顔で見つめるママと悠耶さんの姿もある。

甲ちゃんはもう大丈夫だと言うけれど、その瞬間 これまでにない恐怖心に襲われた…

"きっと、あたし電池が切れかけたんだ…"

人に言われるより自分で悟るのは何倍も残酷で、より深い傷を負ってしまう。

「こぉ… ちゃ… あたし…」

なのに、聞かずにはいられない自分はなんて愚かなんだろう。

それが吉か凶かどちらに転ぶかなんて、聞かなくても分かり切っていることなのに…

「ん? 不安神経症がオーバーに顔出しただけだよ。

悪い夢でも見たんじゃない?」

そうやって彼は優しい嘘をつく。

分かってるよ、あたしを安心させるためでしょ?

「後でいっぱい話は聞くから、今は酸素マスクさせてね?」

頭を撫でられているうちに再び意識を手放した。