スタジオにはパパさんがデザインした衣装を身にまとったモデルさんが他にもいて

その撮影風景をぼんやりと眺めていた。

シャッター音がなる度、ポーズも表情もガラリと変えて その度に衣装の雰囲気も変わって見えるから不思議だ。

それに比べてあたしなんて…

隣の空いてる椅子に貴が反対向きで腰を下ろす。

「落ち込んでんの?」

「…」

何だか、それを認めちゃうと選んでくれたパパさんに申し訳ない気がして黙ってしまう。

「あの人、別にプロのモデルばかりを使うつもりはないんだってさ。

アマチュアの方がプロにない良さや表現力があるからって。

撮影が進まないのも想定内なんじゃねーの?」

パパさんの優しさは嬉しい…

だけど、どうしても一つだけ疑問が残る。

「…何であたしなの?美人サンなんていっぱいいるのに」

「…お前、俺らに大見得を切っただろ?“保険”だって。

だったらそんなの気にしないで、一発でかい花咲かせて来いよ」

これが終わったら、あたしは即入院する約束だ。

甲ちゃんがくれたラストチャンス。

ここにいること自体が奇跡みたいなものなんだから、満喫しないでどうするんだ 自分!

「大丈夫、大丈夫…」

おまじないでも唱えるように自分に言い聞かせると、再度カメラの前に立った。