ただいまの時刻、午後4時17分。
手には母より託されしパウンドケーキ。
…よし!
あたしは気合をいれると、目の前にある湊家のインターホンを押した。
「はーい」
すぐにガチャッとドアが開いて、明美さんが顔を出す。
明美さんっていうのは、一誠のお母さんのこと。あたしはこう呼んでるんだ。
「あら、希咲ちゃん!どうしたの?」
「これ、お母さんからです。パウンドケーキだって」
「あら!ありがとう!
おいしいのよね〜、美保ちゃんのパウンドケーキ!」
ちなみに美保っていうのは、うちのお母さんの名前ね。
「よかったらあがっていって。一緒に食べない?」
パウンドケーキを受け取った明美さんが、朗らかな笑顔でそう誘ってくれるけど。
「あ…あの、今一誠いますか?」