「住所教えて頂けますか〜?」

私はエンジンをかけながら、助手席の深谷君にたずねました。

「…道々ナビしますので、海岸線を駅に向かって走ってもらえますか?」

「了解しました」

アクセルを踏むと、開けた窓から潮風が入ってきました。

海岸線に向かって車を走らせると、ちょうど夕日が水平線に沈んでいく所でしたので、少しの間、車道に車を止める事にしました。

「…先生、あの事思い出しましたか?」

車の座席から夕日を見ながら、深谷君が言いました。

「…あの事と言いますと?」

私も夕日を見つめたまま、聞き返しました。

「外気魔法の事とか…」

「いきなり核心を突いてきましたね〜ほほほ…」

私は楽しい気分になりながら深谷君の顔を見ると、少年の黒い瞳が私の視線をとらえました。

「もちろん深谷君の言っているのは、本当の『外気魔法』の方ですよね〜?ずいぶん思い出しているようですね〜」