「イースはフィルのボディーガードをしていた事がありましてね〜」

「へ?訳分からないんですけど…」

「まぁ、いろいろありましてね〜知りたいですか〜?」

「もちろん!ぜひ!詳しく!」

山形さんはメモを片手に、身を乗り出した。

「ほほほ…タダですか〜?」

「お望みならば何なりと…出来る範囲で」

「では、とりあえず…深谷君、そろそろ帰らなくて大丈夫ですか?」

突然自分に話がふられ、我に返って時計を見ると6時を回っていた。

夕暮れの空にセミの声に混じって、カナカナという澄んだ声が聞こえてくる…

「送りましょう…そう言えば深谷君、もしかして午前中は部活に参加していましたか〜?」

「はい、個人練習ですけど…しばらく楽器にさわってなかったので…」

「ああ、やはりそうでしたか〜チェロの音が聞こえてきたので、そうかな〜と」

「…それが何か?」

「いえね〜午前中から来ていたのかな〜と…」

どうやら深い意味は、ないらしい。