「おぉ…」

周りから、拍手が起こった。

「さすが、深谷だな〜」

チェロを返すと、早見君が言った。

「練習来ないのに、ずるいな〜」

冗談ぶくみに、フルートの山川さんが笑顔で言った。

「間に合いそう?」

バイオリンの西沢さんが、大人びた表情で聞いてきた。

彼女達は6年生だ。

「たぶん…今日は人、あまり来ていないね…」

なにげなく呟くと、白井さんが言った。

「ふふ〜ん、今日は宿題が終わってないのが、午後から図書館に行っちゃったからな〜」

「なるほど…」

うちのオケ部は、3年から6年生で構成され…遠くから来ている生徒も結構多く、夏休みにわざわざ登校して来る生徒は少ないんだけど…

自分はそこそこ家が近いため、来ないと目立ってしまうらしい…

「やってくの?」

聞いてきたのは、入口で会った同級生の吉高さんだ。

彼女はピアノとバイオリンが出来る、つわものだ。