「猫背の奏者ですか〜いいですね〜目指してみては?」

「…いやですよ…」

二人の笑い声に混じって、セミの声が大音量で耳に入ってきた。

夏の終わりが近い事を告げているように、自分には聞こえた…



「…では、音楽室で待っていて下さい…仕事が終わり次第、行きますから〜」

昼食の後、先生とそんなやり取りをして別れた。

人けのない階段を上がって音楽室に向かう途中、窓から青い海が太陽の光を受けて輝いているのが見えた。

積乱雲が海上近くに浮かんで、白い巨大な彫刻のようだ…

結局、食事の間にもハルは来なかった。

今日は来ないのだろう…

ちょうど、好都合かもしれない…

先生とゆっくり話したかったし、ハルや高田さんの前では話せない事が多すぎる…

あの二人には、あまり知られないようにしてたからな…自分も、ルドも、イースも…

いつの間にか、意識がロイズとシンクロしていたらしく、幻のように海底の王国が現れ…宮殿の白い廊下を一人で歩いていた。