「ああ…そうだったな…」

納得したのか、素直に目を閉じてくれた…

女史の殺気が消えるのを感じて…オレはもう一度、唇を重ね合わせた。

呼吸が重なり…無意識に引き寄せた体から、女史の体温と鼓動が伝わってくる…

早くなっていく鼓動を感じながら、じょじょに唇が深く重なり合っていく…

夏の暑さなのか、お互いの体温のせいなのか…頭がボーッとしてきて、何も考えられなくなる…

どれくらいそうしていたのか…自然に体が離れた後も頭がボーッとして、女史の美しい顔を見ていた。

少し頬が赤くなった女史も、息が整うまでしばらくオレの顔を見ている…

そして、ゆっくりと目を閉じてうつむくと、女史が一言呟いた。

「…やっぱり無理だ…」

「…へ?」

はぁ…と大きなため息をつくと、女史が言葉を続けた。

「手間を取らせて悪かったな…悪いが、この話はなかった事にしてくれ…」

「…え?」

女史はそう言うと、ぼう然としている自分を放置したまま、一度もふり返る事なく足早に立ち去って行った…

「ええ?!?」

言われた言葉の意味が理解出来ず、オレは日が暮れるまで、その場に立ち尽くしていた。


真っ赤な夕陽が目にしみるって、こ〜ゆ〜事かぁ…などと思いながら…