正直、大人一人を持ち上げて飛べる保証はなかったけど、今ならやれる気がして、呼吸を整えると意識を集中した。

「え〜?もしかして飛ぶの?深谷君、僕もいい〜?」

息を切らして、追いついて来た山形さんが聞いてきた。

「すみませんが山形さんは、後から普通に来て下さい…」

「え?どこ行くの?二人とも」

「内緒です…」

それだけ答えると、自分は目を閉じて呪文を唱えた。

「え〜?ハル君だけズル〜イ!」

「すみません山形さん、重量オーバーです」

「キーッ!ダイエットしとけば良かった〜」

いや、そういう問題じゃないから…

呪文に集中しながら心の中で突っ込むと、自分の体がフワリと浮かんだ。

「おぉ…」

目を閉じていても月の光を感じる…もしかしたらこの魔法は、月が関係しているのかもしれない…

今日は細めの月だけど、満月だったら山形さんも一緒に飛べたかもしれない…なんて…