だから街を自由に歩き回るなんて、ありえない事なのだ。

彼女にとって、こんな風に自由に散歩をするのは、夢だったろうけど…

自分にとっても夢だったなんて、彼女には内緒だ…

隣を歩く彼女が穏やかに微笑んで、自分の事を見上げた。

「ロイズ…」

「…何?」

「ふふふ…」

楽しげに笑うフレアが、自分の腕にからみついてきた。

無邪気な姿に、ナゼか胸がしめつけられる…

ああ…こんな風に、街を歩かせてあげたかったな…



「…深谷君?大丈夫?」

ハッと我に返り…白昼夢から覚めると、心配そうな顔をしたハルが自分をのぞき込んでいた。

「あ…うん…ごめんね…」

「ははは、なんで謝るの?変な深谷君」

「うん…」

「何か良いよね、こ〜ゆ〜の」

「?」

「ただ深谷君の隣で歩いているのがさ〜」

「…うん」

…同じ事を考えていたなんて、やっぱり内緒だ…



自分の意識が海に溶けて、どこまでも広がっていくのは、泣きたくなるような幸せな気分だった…