「…やあ、こんばんはフィル…待ってたよ?」

部屋のベッドの上に腰かけていた一人の男が、私の方を見るとニヤリと笑いました。

口元がゆがんで見えるのは、気のせいでしょうか?

私も挨拶を返そうと、笑おうとつとめたのですが上手くいかず、顔が引きつってしまいました。

「…久しぶりだね?大学は楽しかった?」

「…」

私は答える事が出来ず、さっきからのぞき込んでいる扉の前から、立ち去る事ばかり考えています…

「…君に聞いて欲しい話があってね…こんな夜中に呼び出して悪かったね…怒ってる?」

そう言いながら白いローブ姿の男が、扉に近づいて来ました。

ああ…この人は私の叔父です…

微笑を浮かべているのですが、私は怖くて怖くて、その目から視線をそらす事が出来ません…

何かに射すくめられたように私の足は動かず、逃げるのは不可能です…

どんどん叔父さんは近づいて来て、のぞき窓に手をかけました。

…自分は逃げる事を、あきらめました…

「良い子だね、フィルは…」

見えない手で頬をなでられた気がして、意識が遠のきました。

「…これから話す事は、僕たちだけのヒミツだよ?」

叔父さんはニヤッと笑いました。

その先の事は、あまり…良く…覚えていません…