辺りは暗くなっていて、車内の時計を見ると、7時近くになっていました。

「そうですね…この話は、また…送ってくれて、ありがとうございました」

深谷君は丁寧に頭を下げると、車から降りました。

私も外へ出て、家の前まで着いて行きましょうか?と言うと、断られてしまいました。

私もちょっと、深谷君のお母さんが、どんな方か気になっていたのですが…今日はあきらめる事にしましょう。

「…先生」

小さな背中を見送っていると、不意に深谷君がふり返りました。

「どうしました?」

「山形さんには、この事…」

「ええ…しばらく、ハッキリした事が分かるまで言わないつもりですよ〜?彼が気づかない限り、黙っていようと思います…もちろん他の人にもね〜?」

「…分かりました」

小さな声で言うと、深谷君は急ぎ足で自宅の門の中へと消えて行きました。

「…さて」

私は一つ伸びをして車に乗り込むと、独り言を口にしていました。

「どうしたものですかね〜?」