「水嶋良い奴なんだけどなー」

目線はテレビに向けたままそう言われて、胸が苦しくなる。

「彰人さん、私の気持ち馬鹿にし過ぎです。仁菜は彰人さんからみたら全然子どもかもしれないけど、ちゃんと恋するんです」

「……」

「……仁菜は本当に彰人さんが好きなのに。彰人さんは恋愛なんてクソくらえなんていう冷血人間だから分からないんだ」

「その気持ちが本物だとしても、好きになる相手を間違ってんだよ。水嶋にしといた方がよっぽどお前は幸せになれる」

そのセリフにたまらず両手で拳を握って怒った。

「彰人さんの馬鹿!」

「なんだって?」

怒りを露にしたひょうしに、さっきからスタンバっていた涙が臨界点を突破して目からぽろぽろ溢れてくる。

「間違えじゃないもん。私の幸せ勝手に決めないで……っ」

私の涙声にさすがに驚いたのか、後ろを振り向く彰人さん。何か声をかけられたような気もするが、

「彰人さんの分からずや!」

と最後に喚いて、涙が溢れる目をごしごし拭く。そして、

「……もうお家に帰る」

そう言って、自分の部屋にこもった。


こもってから、ちょっとは声をかけてくれることを期待していたが、そりゃあまぁ朝まで何もなく静かに時間は過ぎて行った。
きっと彰人さんからしてみては、やっとお荷物がなくなると思ってせいせいしているんだ。
そう思うと悔しくて、明け方わざと大げさに鼻をかんでやった。

……作戦は見事失敗、お母さんとおじさんになんて言おうか。