「彰人さんがこんなに優しくしてくれるなら、秋は山梨にブドウ狩りにでも行ってこようかな」
「何、居座る気でいるんだよ」
「だって今、側にいてって言ったじゃん」
「言ってねぇよ」
都合良く解釈してて、思わず吹き出して笑ってしまう。笑う俺に恨みがましい目を向けながらほっぺたを膨らませ始めた。
その様子が微笑ましくて目を細めて、コロコロ変わる仁菜の顔を見つめた。
「だけどもし結婚したらって想像すると、こんなに笑える相手はいないのかもしれないな」
仁菜が目をうるうるさせ始めたところで、はっとして
「まず結婚しないけどな」
と付け足した。