「いっぱい取って来たから、あの変態にもおすそ分けしてあげましょうか。これはぷりん先輩への賄賂分、これはいつもお世話になっているめろんちゃんの分。余ったらジャムにしましょう」

嬉しそうに話す仁菜、ふとノースリーブから二の腕の赤い日焼け跡が目に入った。ところどころ皮がむけている。

「これ、痛くねぇの」

詳しく見ようと、腕に触ろうとするとびっくりして俺から一歩後ずさりした。

「なんだよ、いつもは自分からひっついてくるくせに」

「だ、だって、自分からと相手からとじゃ違いますよ。不意打ちはダメです。触るなら触るって事前に申告してもらわないと」

「なんだそれ、こんなプニプニした腕で何そんなに勿体ぶってんだよ」

そう言って半ば強引に二の腕を掴むと、悲鳴があがった。

「いっ、いったーっ」

だろうな、というような反応。

「日焼け止め塗らなかったのか?」

「持ってなくて」

21才の女子が日焼け止め持ってないってことがあるんだろうか。男の俺でさえ持っているというのに。


「一回シャワー浴びて来い」

「え?」

「薬塗った方が良い」

「これ位大丈夫ですよ」

「一応、女の子なんだから跡残したら大変だろ」

そう言うと元々丸い目を更に丸くさせた後、目線を足元に落とし何を勘違いしたのか頬を赤く染めて静かにはいと頷いた。

いつもだったらその顔をむにゅっと掴んでやるところだ。

風呂場に行ったところで、常備薬の中から軟膏を探す。

その後、夕食の支度をして仁菜が出てくるのを待った。
しばらくして首にタオルをかけて出てきた風呂上がりの仁菜に、薬を塗ろうと座ってるソファの隣をぽんぽんと叩いて言う。

「はい、ここ座って」

「え?」

「塗ってやるよ」

「い、いや、じ、自分で塗ります」

「後ろ届かないだろうが」

「でも、」

「ほら、おいで」

慌てふためく仁菜を半ば強引に、隣に座らせ後ろを向かせた。

「ひっ」

薬を塗ろうと半袖をまくると、驚いたような声を出して両肩に力が入る。かちこちになった体に、笑いながら言う。

「はいはい、恥ずかしがらない」

「……っ」

「そんなに緊張することないだろ、こっちが気まずくなるわ」

力の入ったままの体に、背中側の肩と腕を中心に軟膏を塗った。ひりひりするのか、触るたびに変な声をあげてびくびくしている。

「……お前が人肌恋しいっていうのが、少し分かった気がする」

「え?」

「やることなすこと本当馬鹿で手がかかるんだけど、なんだかんだ言って癒されてる気がするよ」

「え?結婚したい?」

「だからどうしたらそう翻訳されるんだ」