渋々、仁菜を迎えに行くことに。あまりにも短すぎた俺の静寂、昨日の夜はやっと取り戻したと一人高笑いをしていたのに。

一応身バレ防止のため、帽子とマスクをして出かけた。


「彰人さんっ」

「あ、お兄さんですかっ!良かったね、迎えに来てくれて」

俺の登場に目をうるうる輝かせて感激する仁菜。
警察の人も安堵した様子で、さっさと引き取ってと言わんばかりの様子。
電話では物騒な事を言っていたが、仁菜の様子に事件性がないと見たのか、はたまためんどくさかったのか、まるで迷子か家出人を保護してましたというような感じで俺を出迎えた。

「じゃ、元気でねっ」

バイバーイと、凛々しい警察官から手を振られる。それに満面の笑みで、「ありがとうございましたー」と大きく手を振りながら交番をあとにする。もう21才の立派な成人だというのに、一体こいつはいくつだと思われていたのだろうか。

「警察の人優しかったー」

「どこがだよ、面倒ごとを追い出せて良かったっていう笑顔だろ、あれ」

あぁ、そしてその面倒ごとが再び俺のもとへ戻ってくることになるとは。あまりにも短か過ぎやしないか、俺の静寂。すぐさま通りに出てタクシーを捕まえ、そそくさと渋谷の喧騒から逃れた。

改めて、仁菜の姿を見て思わず顔が引きつる。

「……しかし、よく、その恰好で外に出ようと思ったな」

「だって、彰人さんが置き去りにするからっ。服もあの人に人質だって取られちゃうし仕方がなかったんです」

「あーあ、お前はそんなに俺の独身生活を邪魔したいのか」

「やっぱり、そんなこったろうと思った!あんな風に強引に追い出そうとするなんて!」

「どうすんだよ、家に帰ってもゴジラに連行されるだけだぞ?まだそんな恰好させられても水嶋の方がマシだったろうに」

「彰人さん、守って」

「無理だよ、俺は長谷川博〇じゃない」

「長谷川?何の話?」

「俺にゴジラはやっつけられないってこと」