「何、簡単だ。自分が兄だと貫き通せばいいだけ」

「仁菜ちゃんが違うって言うに決まってるでしょ、それになんか俺犯罪者扱いされてんのに、そんなとこ行ったら捕まっちゃうかもしれないじゃないですか」

「お前のルリルリに対する気持ちはその程度だったのか?」

「だって、先輩、俺に本物の犯罪者になれと!?」

声を荒げだした水嶋に対し、俺も感情的になって負けじと大声を出す。

「なれよ!?」

「嫌ですよ!」

「何だよ、お前ルリルリ好きだろ、こんな簡単に手離していいのかよ!」

「好きですよ、何より大好きですっ!」

「だったら、早くルリルリを迎えに行って適当に警察納得させてお前の部屋に閉じ込めておけ!」

熱弁する俺に、じとーっとした疑わしい視線を向けられる。

「……先輩、ただ自分の独身生活を邪魔されたくないからって、そんなに躍起になっている訳じゃないですよね?」

「な、何言ってんだ、お前は。そんな訳ないだろ」

「あー、しどろもどろになって、怪しー。それにルリルリって言ったって、本物じゃないし。正体はちんちくりんの子どもだし」

自分のスマホを手に取ると、あ、やっぱり、と意味深なことを言い出す。

「仁菜ちゃん、早く迎えに行ってあげた方がいいですよ、なかなか騒ぎになってるみたいだがら」

そう言って自分のスマホ画面を見せてくる。そこには仁菜があのルリルリのコスプレをして渋谷の街中を歩いている写真が映し出されていた。SNS系は疎いからよく分からないのだが、ツイッターというもので誰かがあげたものらしい。

その写真の下には、青文字で、

♯ルリルリ渋谷に登場 ♯ルリルリ発見

と続かれていた。よく分からなくて水嶋にどういうことか聞くと、

「画像にハッシュタグ付けられて、リツイートされまくってんすよ」

「それってまずいのか」

「まずいも何も、ほら、こんなに広まってる」

そして、たった今、誰かが呟いたものというものを見せてもらう。

ルリルリ捕まってるーwww

ルリルリ交番で尋問されてるwwww

そこには、実兄中継さがらの文言が並んでいた。

「これがトレンドにでも上がったら一躍時の人ですよ。その前に迎えに行って事件を収集させないと」

「いやいや、こんな誰が見てるか分かんない状況で、迎えに行ったら俺まで変人扱いされるだろ」

「しょうがないですよ、あなたが強引に置き去りなんてするから」

「元はと言えば、お前の変態じみた趣味のせいで……」