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昨日は自宅のでっかなテレビで夜な夜な飲みながら、録画していたとあるSF映画を見た。やっぱり心おきない一人暮らしとは素晴らしいもの。やっと、本物の静寂が帰ってきた気がした。
その日も仕事を終え早々に帰ろうとした矢先、携帯がぶるぶる震え出した。03から始まる、まるで身に覚えのない番号。
「先輩、出ないんすか?」
「……嫌な予感がする、不吉な匂いがぷんぷんする」
「大げさだな、かわりに出てあげましょうか?さっきから鳴りっぱなしじゃないですか」
そう言って、水嶋が電話に出るとスピーカーにして俺のデスクの上に置いた。
『あの、宇田川交番の者ですが、えーあなたの妹さんと言う方が、街中で不審な様子だったのでこちらで保護しまして。肉親はあなただけと言うことで、交番まで迎えに来てくれないかと……』
嫌な予感、見事的中。
「いえ、本当の肉親がいるはずですから。まずそちらを当たって頂いて」
努めて冷静にスピーカーに話す。
『それが、どうしてもあなたの名前しか出さないんです。発言もなかなか要領を得なくて、こっちも困ってしまって』
「なんて言ってるんですか?」
『お兄ちゃんに捨てられて、友達に預けられたら無理矢理服を脱がされてこんな格好をさせられた、と。そして、あくまでも本人曰くですが身も心も犯され傷つけられた、と。これが本当だとすると、監禁罪、強制わいせつ罪もしくは強姦罪が適用されますので署へ連絡して本格的な調査を始めなくてはならないのですが……』
「えぇっ!?」
大事になっており思わず声を荒げる水嶋。俺も呆れて間抜けな返事しかできない。
「はぁ」
『もし、あなたが迎えに来てくれるのなら、全て水に流すと言っているんです。女性警察官が詳細を聞いても、具体的なことは言わず抽象的な発言を繰り返すだけで、なんとも発言自体が怪しく信用性を疑ってしまうというか……。とりあえずお兄さんに迎えに来てもらって事情を教えてもらえたら、と』
そう言われて終わる電話。俺は水嶋の肩に手を置いて、
「よし、水嶋、迎えに行ってこい」
と真剣な面持ちで言う。
「は?こんな話聞いて行ける訳ないじゃないですかっ」
それに対して、慌てて断る水嶋。