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ひどい、ひどい。
彰人さんが変なさる芝居をしてまで強引に立ち去っていたあと、玄関のドアに張り付いておいおいと泣いていた。これまで一緒に暮らしてきて仲良くなれたと思っていたのは私だけだったのだろうか。ぴゅあぴゅあにだって迎えに来てくれたのに。やっと仲直りして、また二人の生活に戻れると思っていたのに。帰ってきて早々、こんな風に置き去りにするなんて。
今度会ったら絶対文句言ってやる。
そう思って、ふと、今度?今度っていつだ?と不安になる。
あの人と付き合っているうちは、もう簡単に会えないんじゃないだろうか。
そんなの嫌だ!
彰人さんは運命の人なのにっ。
「うーっ」
そうやって更にボロボロ泣く私に、背後から変態の手が忍び寄る。ドアにもたれかかってしゃがみ込む私の肩に、そっと手をのせられゾクッとする。
「ルリルリ、悲しいのは分かるけど。彰人さんの方にも事情もあるんだから、ここは少し大人になって新しい生活に早く慣れようね?」
意外にも優しい、傷心の私を慰めるような声色に、少し心が開きかける。
「うっ、うっ」
「でもおかしいな、今日の先輩のオペ、鼠ヘルと、ヘモだったような。急変しようがないけど」
「う、うそ、えんっ、ぎだった」
泣く私の頭にそっと手が乗っかる。
「うん、うん、可哀想に。そんなに泣く位先輩に懐いていたんだね。僕のこともそれ位慕ってくれたら嬉しいな。ね、これから一緒に暮らすんだから仲良くしよ?」
完全に心を持っていかれそうになったところで、ふともう片方の手に握られた煌びやかな衣装が視界に入ってきた。
「……」
「さぁ、ルリルリに変身だよっ」
「……っ!!」
「さっ、お着替えしようね」
「いっ、いやぁあああああああっ!」