大丈夫、仁菜は上手くやっていける。あの子はあぁ見えて根性あるし、強い子だ。
そう自分に言い聞かせながら家へ着くと、そこにはやはり不安そうな仁菜が待っていた。

「ルリルリの恰好ってどんなんだろうと思って調べようと思ったんですけど、なかなか怖くて」

だめだ、調べられたら一貫の終わりだ。ハラハラしながら仁菜に断言する。

「そ、そんなこと調べなくていい」

「彰人さん?」

「いいか、仁菜、世の中には知らない方が幸せだったりすることもある。それにちょっと嫌だったりすることもそれが日常になれば人は慣れるもんだ」

そんな俺の様子があまりにも不自然だったのか、更に不安がる仁菜。

「彰人さん、どうしたんですか?ルリルリの恰好知ってるんですか?そんなにおかしいんですか?」

「そんなことない、今日水嶋に見せてみらったけど、なんか、

「なんか?」

「……涼しそうな服だったよ」

「なんですか、その間!もう絶対変な衣装なんだ!やっぱり行きたくないですっ」

「あのゴジラに消炭にされるのとどっちが良いっ?」

「どっちも嫌だー、もうここにいたいー」

「だめだ、どっちみちこの家にいても、あのゴジラに連れ去られるぞ」

「うわーん」

泣いて嫌がる仁菜をずるずると引きずって車に乗せ水嶋の家へ無理矢理連れて行く。



「水嶋、悪いけどよろしくな」

「……」

俺の後ろから出ようとせず、ぎゅっと俺の服の裾を握っている。涙をたっぷり含んだ上目遣いで見つめられ、最後の抵抗とばかりに分かりやすいSOSサインが出される。
まるで仕方なく、飼えなくなったような子犬を里親に出すような心境で、俺もちょっと心が痛い。

「わぁ、ルリルリっ!よろしく!」

そんなおっかなびっくりの仁菜にお構いなく、引っ張り出す水嶋。

「ルリルリーっ」

興奮を隠さず仁菜の両頬を嬉しそうに摘まむ。その様子に、本当にこの人に預けるんですか、という目を向けてくる仁菜。

「ほ、ほら、水嶋。仁菜が戸惑ってるだろ、そういうのはもう少し仲良くなってからな」

「ごめん、ルリルリ。嬉しさの余りについ手が出ちゃった」

「手が出ちゃった……?」

この人やっぱり危ない人です、と俺に助けを求める仁菜。