ごくっと唾をのみ込んで意を決してドアを開ける。
「もう出るの遅い!」
早速ゴジラが鬼の形相で火を吹く。俺は顔を引きつらせながら無理矢理笑顔をつくり、憤慨する彼女を迎えた。
「悪い、部屋が散らかってて」
「もうお土産いっぱい持って来てたから手が痺れちゃったじゃない」
英字の店のロゴが入った大きな紙袋を持ち上げて俺を睨みあげた。そして自分の部屋かのように、俺の家へズカズカと入り込んでいく。
「私がいなかった間に浮気してなかったでしょうね」
そう言ってリビングをきょろきょろしながら、くんくん匂いを嗅いでいる。
「まさか、そんな命知らずなことしないよ」
「……ねぇ、なんか部屋散らかってない?何このブサイクなぬいぐるみ達」
仁菜が来てからというもの、そこら中になんの動物をモチーフにしたのか分からないブサイクなぬいぐるみが散乱している。明らかに怪訝そうな顔をしている涼香に、これはチャンスとばかりにそのブサイクなぬいぐるみを一つ手に取った。
「そうなんだ、俺隠してたけどこういうのが趣味でさ。可愛いだろ?」
「はぁ?趣味わるっ」
涼香にそう一蹴された瞬間、仁菜の部屋から、ガタンと物音がした。
……っ!
冷や汗がどっと出る。あの馬鹿、絶対ドアに耳付けて盗み聞きでもしてたんだろ。
「……何?今の音、何かいるの?」
「何もいないよ、物置で何か崩れ落ちたんじゃないかな」
疑い深い彼女はそのまま仁菜の部屋へ向かっていく。
「何もないってば」
俺はそんな彼女を追いかけて腕を掴んで止めるも、それで彼女の気が済むわけがなく。
「そんなに慌てるなんて怪しいっ」
じろっと睨み付けられ、制止しきれず彼女は仁菜の部屋のドアノブに手をかける。その瞬間、はぁ、終わったと、頭を抱えた。
「あれ?なんでこの部屋開かないの?やっぱり誰かいるんでしょ!」
部屋の中からドアを開かせまいと仁菜が踏ん張っているよう。だけどそれで彼女が観念するはずがなく、更にヒートアップして全力でドアを開けようとする。