その後、仁菜より一足先に家へ帰る。22時を過ぎた頃、インターホンが鳴り応答するとモニター画面には仁菜の姿が。

『彰人さん、ただいまー』

そう言って、ニコニコ笑う彼女はまるで尻尾を振って喜ぶ犬のよう。ドアを開けると、俺も今日ばかりは彼女を優しく出迎えた。

「おかえり」

「あれ?珍しく、彰人さんが優しい……っ」

すると、調子に乗ってぴとっと俺の腕にまとわりついてきたもんだから、首の後ろを掴んで離させた。少し優しくしたやっただけですぐこれだ。

「ひっつくな、暑苦しい」

「彰人さん、今日仁菜のこと心配して会いに来てくれたんですか?」

「一応な、どっかでのたれ死なれなら後味悪いだろ」

「素直に心配だったって言ってくれればいいのにー」

そう言って俺の腕を人差し指でつんつん突いてくる。

「何だこの指は」

またもやイラっとしてその指を握った。

「痛い、痛い」

そんなやり取りをしていると、またもやインターホンが鳴った。

ピンポーン、

時間はもう22時を回り、仁菜はもうすでに帰ってきている。アポなしにこんな時間に訪問してくる人間は一人しか思い当たらず、焦って仁菜を自分の部屋へ行かせた。

「……仁菜、しばらく俺が良いっていうまで自分の部屋から出てくるな」

「え?どうしてですか?」

「いいから!」

「彰人さん、一体誰が来たんですか?」

短気なその人物は、容赦なくチャイムを連打する。

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!

そのうちドアを叩き始めるだろう。そして開口一番、遅い!と怒鳴りつけるんだ。仁菜も不穏な雰囲気を察したのか、疑問に思いながらも俺の言うことに素直に従って部屋へ籠った。

「いいか、万が一出くわそうものなら食われるとでも思え」

「えっ、人間なんですよね?」

「それ位の危機感を持てって意味だ」

俺の頭の中ではゴジラのテーマソングが流れている。