単純だなー、と思いながらにゃんにゃんバーグの顔半分まで食べたところ。
水嶋がスプーンを口に運びながら、おもむろに聞いてきた。
「ていうか、そろそろ涼香さん帰ってくるんじゃないですか?あの子と住んでるのバレたら殺されますよ?」
不意を突かれた水嶋の発言に思わずフォークを落としそうになる。
一瞬にして顔が強張る。
無理矢理口角を上げ不自然に笑って返した。
「ははは、それ冗談に聞こえないから」
「ははは、だって冗談じゃないですもん」
奴も口は笑っていれど、目は笑っていない。
大真面目で言っているのだ。
「……そうだよ、笑ってる場合じゃねぇよ」
突然、背けたい現実に直面させられ落ち込んで下を向く。
「どうすんですか?」
「どうするも何も隠し通すんだよ、帰ってきたら本当にあいつのことお前に頼むことになるかもな」
「まじっすか!わーい」
「……間違っても変なことするなよ?」
「分かってますよー。でもルリルリの格好してもらう位は良いでしょ?」
「しょうがないな、それであいつの面倒見てくれるなら」
涼香とは俺の彼女のことだ。街中で彼女とすれ違えば、10人中10人が振り向くような完璧な美貌とスタイルを持つ。
それを存分に魅せるかのような派手目な化粧に、やや露出度の高くスタイルが強調されるような服を着ていることが多い。
仕事は客室乗務員をやっていて、今ヨーロッパに行っているのだが今週末いよいよ帰ってくる。
よく彼女を紹介すれば友人から羨ましがられるが、冗談じゃない。
良いのは見た目だけで性格は小悪魔を通り越した、唯我独尊女王様。
怒りっぽいし嫉妬深いし、もし仁菜の存在が知れたらハムスター諸共踏み潰されてしまいそうだ。