「わーい、いいんですかっ」

「ちゃんと野菜も食べろよ」

できあがったパスタと共に、レタス、ミニトマト、薄くスライスしたキュウリや玉ねぎなどを盛ったサラダをテーブルの上に出す。

しかし、そちらには不自然な位目線を合わせない仁菜。


……やっぱり。

「お前、野菜食べられないだろ」

「そ、そんなことありませんっ。あえて食べようとしないだけで」

「しょうがないな」

仁菜が少しでも食べやすいように、クルトンとつまみのチーズとサラミをサラダの上から撒き、その上からシーザードレッシングをかけた。
あとは茹で卵でもトッピングしてやろうかとも思ったが、そこまではめんどくさい。


「食べてみろ」

ずいと箸を持たせて、強制的にサラダを食べさせる。
苦い顔をしながら、渋々口に入れた仁菜。


「あれっ、おいしい。すごいちゃんと食べれる」

そら見たことか、ちょっと得意気になってしまう。
子どもの好き嫌いを克服させた時の親の気持ちってこんな感じなのだろうか。


しかし……。

むしゃむしゃ野菜を食べてくれるようになったのは良かったのだが、その箸の持ち方は一体何なんだ……っ。
これには、どうしても突っ込まずにはいられない。

「お前、その端の持ち方どうしたんだ」

「え?」

「今まで、誰にも注意されてこなかったのか」

「うーん、小学校の時に先生に言われたことるような……。でも、食べれれば大丈夫ですっ」

お前、本当に日本人か。
少し日本に慣れた外人の方がよっぽど上手く使えるんじゃねぇの。

心の中で毒づきながら、箸の持ち方を教えてやることに。