「うわ、そうやって食う奴久しぶりに見たわ」
なんとも懐かしい光景。
小さい頃、自分もやった記憶がある。
だけどそれを大人になってからやる奴がいたなんて。
すると奴は何を勘違いしたのか、ふふんと調子に乗り始めた。
「あら、それはなんてお行儀が悪いのでしょう」
「…………」
どうやら、プリンは皿にのせるのが行儀が良いと思っているらしい。
脳内お花畑な奴だとは思っていたが、ここまでくると不憫にも思えてくる。
なんて可哀想な頭なんだ。
ダイニングのテーブルに、さっきの二つのパンと、小さなパック牛乳1本。
それとプリンを並べると、奴は両手を揃えていただきますと言った。
まさか、本当にそれがお前の晩御飯のつもりなのか……。
思わず目を疑ってしまう。
なんていう食生活してるんだ。
「お前、夜いつもそんなの食べてるのか?」
「はい?菓子パン大好きです」
片手ではむと菓子パンを咥え、もう片方の手でパック牛乳を吸う。
はむはむ、ちゅーちゅー。
テレビでよく見る刑事の定番の張り込み食を、仁菜は満足そうに食べていた。
なんだか本当に不憫に思えてきたが、もう関わらないと決めたのだ。
付け込まれて、何かと頼られるようになったら厄介だし。
ふと、リビングにあるテレビをつけた。
すると、仁菜が子どものように、パンを片手に持ちながらテレビに近づいて行った。
「おぉ、でかいっ、小さな映画館みたい」
「大げさだな」
「だって、仁菜のテレビの4倍いや、5倍はありますよっ」
両手いっぱい広げながら、オーバーリアクションをとる仁菜。
俺はチャンネルをいつも見ているニュースに合わせた。
すると今まで、テレビにきゃっきゃっ言っていたのに途端に静かになってしまった。
なんだそんなにニュースが気に食わなかったのか。
奴の様子をちらっと盗み見ると、食いつくようにテレビに夢中になっていた。
本当に子どもかっての。