「あれ?」

ちょっと待って、そしたら彰人さんと私の関係って……。
脳内でムフフな妄想が浮かんでしまい、思わずにやけてしまう。

「なんだよ」

気持ち悪そうなものを見るような目つきで私を見る彰人さん。

「兄妹って認めないってことは、私達の関係ってどうなるんですか?」

「そうだな、共通の親族がいる遠い親戚ってとこか」

「つまり、ただの男女……」

「気持ち悪いな、何にやにやしてんだよ」

1人浮かれる私に、彰人さんはくだらなそうにクローゼットを開けて着替え始めた。
負けじと、そんな彰人さんの傍に寄っていき、目をキラキラさせながら言った。

「そんな2人が一緒に暮らしていくうちに、恋愛関係にはって……ブッ」

しかし言い終わらないうちに、ゴツンっとクローゼットがおでこにクリーンヒット。

「あ、わり、視界に入ってなかった」

「ぜっったい、嘘!」

ひりひりするおでこをすりすり擦りながら、涙目で恨めしく見上げながらそう訴えた。


あっ、もしかして……!


「彰人さん、照れてるんですか?」

「……もう一回、ぶつけられたいのか?」

すると1人私を部屋に残し、リビングへ行く彰人さん。
その後をついていくと、さっき貼り付けたばかりの2人のきまりごとに、

俺に一切の恋愛感情を抱かないこと

と、太字ででかでかと一番下に付け足されてしまった。

「そもそも、法律的にアウトだろ」

「法律的に?」

「認めたくないけど、一応血の繋がりはあるらしいからな」

「でも、恋は障害がある方が燃えるって言うじゃないですか」

どろどろの昼ドラ、ベタベタな少女漫画
を思い出しながら、声を張り上げて言う。しかし、呆れきった彰人さんは完全にシカト。

「じゃ、俺は夜まで寝るからくれぐれも起こすなよ」

「分かってます!静かにしてますっ」

びしっとおでこの上で敬礼のポーズをする。
すると無言のまま冷たい目で見下ろされてしまった。どうやら信用ないらしい。
そのまま何か諦めたかのように部屋の中へ。