見やすい位置に貼り付けたその紙。
掲げたルールを眺める仁菜に聞く。

「一緒に住む上で、最低限守って欲しいことなんだけどできるか?」

「はいっ、でも一ヶ月以内に出て行くっていうのは……」

「何?もっと短くて良かったか?」

そう言うと、仁菜は慌てて顔を横に振った。


「それから、キッチン、風呂は好きに使っていい。洗濯機、冷蔵庫その他電化製品もな。ただしちゃんと後片付けはすること」

「はいっ」

……返事はいいけどなー。

果たしてこいつに、後片付けなんてできるのか。
さっきの決めたルールだってそうだ、こいつに人のプライバシーなんて守れるのだろうか。

あぁ、不安要素しかない。


ひととおり説明し終え、シャワーを浴びようと風呂場へ向かおうとしたところ仁菜に引き止められた。


「あ、あの、彰人さん……っ!」

「なんだ?」

「えっと、あ、あの……やっぱり、なんでもないです」

「なんだよ、はっきり言えよ」

「いいですっ、なんでもないです」

少し気にはなったが頑として言おうとしないこいつに、あっそとだけ言って風呂場へ向かった。