緋色に染まりゆく黒雲の下で、

街の変化を追う時計塔は、

午後5時を知らせる。





 現在時間から過去へ来た玖珂井は、

寄る所があるからと、

途中で友人の浅水と別れた。






 目的の場所は、

自宅から程近い、些か洒落た喫茶店である。



 異能を持つ彼にとって

普通の喫茶店であったり、

駅前のファストフード店に入ることはかなりの勇気を要する。





 なぜならば、

 そういったところに来る客の大多数が
異能を持たない一般人であり、

彼らは皆、異能者を奇異の目で見、
何の根拠もない嘘の噂を撒き散らしたり、

あるいはゴシップ誌にネタとして投稿して
金にするといったことをしたりするためだ。




 玖珂井を含めた異能者は皆、

それを嫌って近寄らないのだ。



 しかしながら、

異能者には専用の待遇

及び救済がなされている。






その一つが此処、星螺市への居住だ。