研暦25年10月7日午前10時

 5年前から日本の中心地に出来たという
次世代学園都市-星螺[セイラ]。

 その南西区の繁華街で、
幽フォンエイは買い物をしながら
考え事に耽っていた。


(あと2人誘えば、
俺のノルマは達成できるんだけどなぁ……)

 特売品の餃子1パックを
買い物かごに入れながら、

幽フォンエイは、数時間前のことを思い出す。



***


現実世界と異なる世界-フールズ。

その世界に住む者は誰でも、
生まれながらにして
様々な種の異能をもっている。

 ある貴族の家の子は、
現在から過去へと
タイムスリップする能力を持って生まれ。

 またある者は、
夜の天空に浮かぶ星々の力を集め、
大剣やメイルなどの武器に変える能力を、
命とともに授かった。

 これらのちからを持つ者は、
悪魔と死神の間に生まれた者の血を受け継ぐ、
異界-フールズの住人だけで、1歩《狭間》を跨いだ向こうの
現実世界の人間は持たないといわれていた。

 しかし、その言い伝えは、
狭間に異変が起きて以後、覆されることとなった。


 幽フォンエイは日本に来る二時間前、
異界-フールズをたずねていた。

黒雲と星々に見下ろされて建つその雑居ビルを
見上げる。

(このビルの最上階へ行けばいいんだな)

 事前に上司から渡された
地図と指示文を確認後、
腰まで伸びた金色の
ウルフカットの髪を靡かせるように、
幽はビルの外階段を駆け上って行く。