その後の休み時間は予想していた通り学園のアイドルになったかの様に声をかけつづけられた。

少し疲れた気もしたが嫌な気ではなかった。
既に何人か友達もできてほっとした。
色々学校の事も知れて良かったなぁ…。

その後は順調に放課後まで進んでくれた。

授業が全て終わり終礼も終わると担任に呼び止められた。
部活に興味があれば学校内を案内するのと一緒に見せようという事だった。
前の学校ではゆったりとした美術部と文芸部をかけもちしていたのだが…できれば今度もゆったりした部活がいいなぁ。
一人で部活見学をするのは少し気が引けるし先生に頼ってみよう。
私はよろしくお願いします。と案内をしてもらう事にした…。


歩いていて思ったのは、ひたすら広い。そして無駄に綺麗。だった。
そして驚いたのはどうやら私がさっきまで授業を受けていたのは本校舎で、部活や特別授業をする教室などがあるのは別館なんだそうだ。
前の学校はこの本校舎の広さもないし別館なんてなかったから…本当に驚いた。
今日の時間割には幸い別館の教室を使う授業が無かったので助かった。
スムーズに教室移動ができる様にちゃんと覚えなきゃね…!

本校舎の案内が終わると渡り廊下を通り別館へと初めて入った。

別館へ移動する間にグランドを少し覗き、サッカー部や野球部などなどの運動部の部活を見せてもらった。
運動部はものすごく力が入っているようで大会で優勝したりしているほどなそうな…。
あまり運動が好きではないですと小声で担任には伝えておいた。

別館の中では様々な部活が行われていた。どうやら申請をすれば愛好会としても活動ができるようだ…。
こっそりと前の学校での部活を伝えておいたのを覚えていてくれたらしく、先生は私を美術部へ連れて行ってくれた。
「しかしなぁ…美術部も一応あるんだが漫画部とかそういうのをお勧めしておくよ。」
へぇ、漫画部なんてあるんだ、と思いつつ。
「どうしてですか?」と首をかしげて聞いてみる。
「前は結構部員がいたんだが、うちの学校は運動部に力をいれているからかな…美術部の部員がどんどん減って行ってしまってね。ただイラストを描いたりするって子たちは皆漫画部や違う愛好会に流れてしまって今は結構寂しい状態なんだよ。」
なるほどな…。
美術部だと漫画って感じとは違ってガッツリアートだし…運動部に力をいれてると結構差ができちゃうもんなのかもね…。

【美術部】と書かれた札のかかっている教室はなんとなくあぁ美術部って感じのする絵具などの汚れやそれとない雰囲気が漂っていた。
ガラッと扉をあけると、窓のそばに一人生徒が立っていた。

「あぁ九条君。良かったよ~誰もいなかったらどうしようかと思った。」
九条、と呼ばれた生徒は驚いて目を見開いてこちらを見るとすぐ私に視線を向けた。
少し前髪が長い気もするが丁度いい具合の短髪でねこっ毛と言うのだろうか、ふわっとした印象だ…。
「大宮先生…。俺は暇人なのでいつでもいますよ。それでその子は?」
少し苦笑しながらまた私へ視線を写す。
「そうかそうか、九条君は3年だから今日編入生がきてたの知らなかったか。この子は今日転入してきた大友楓さんで、今は部活案内中なんだよ。」
へぇ~と納得したようにうなづくと、ゆっくりこちらに歩み寄って来て
「九条 奏って言います。美術部では部長…っていうか俺しかいないからなんだけどね。もし興味があったらよろしく。もちろん体験入部だけでもいいからさ。」
そう言ってにっこりと照れたように笑った。

私も軽く挨拶すると、先生がとりあえず他の部活も見てみようか。と案内を続けてくれた。