「いってきまーす。」

なんて、言いながら家から出る事なんてなかった。
私は黙って靴を履くと黙って家を出た。

今日は学校へ初登校の日だというのに家には誰もいなかった。
あぁ、初登校と言っても入学式ではない。

私たち家族は数日前、隣の県からこの土地へ引っ越した。
今まで通っていた学校へは道のり的に通えなくなってしまい編入したのだ。

転校になる、と話を聞いたときそれはもう不安でしかたなく嫌がっていたが、こう目の前になると諦めがつきすぎてどうでもいいと落ち着くものだった。

制服はまだ届いていなかったので前の学校のままの制服だ。
紺色のセーラー服でスカーフは白色。
新しい学校の制服はブレザー式のようなのでドキドキと期待しつつも慣れるまで時間がかかりそうだなぁ…なんて思っている。

登校中、慣れない街にも少しそわそわしてしまいお店や家をジッと見てしまう。
赤信号が変わるまでの間にふと、ショーウィンドウに写る自分を上から下まで見る。

少し髪の毛が伸びたなぁ…。

今まではかなり髪を短めにしておりボーイッシュだったのだが、今は黒い髪が肩にかかりそうなくらいになっていた。
性格も少しボーイッシュめで似合ってはいた。
ただ年頃ということもあり少し女の子っぽくしたいな…なんて思ってひそかに髪を伸ばしていたりした。

今度の学校では少し女の子っぽくしようかな…前の学校の子にはびっくりされるかな…。

そんな風に学校でどういう風にしよう…なんて話そう…なんて考えていると学校についてしまう。
前の学校の校舎は建物自体が古く、小学校や中学校と変わらない感じだったのだが、それと違い新しい学校は割と新しい感じのする校舎で、校門も大きく整っており白い綺麗な壁で全体的に作りが学校というよりどこかの施設やビルなんて感じで豪華な気がする…。

都会ってすごいのね…。

校舎に見惚れていると後ろや横からこそこそと声が聞こえてくる。
気づけば前を歩く生徒が振り返ったりもしていた。

あぁそうか…まだ制服も違うし見慣れないから目立つのか…。

と、理由を理解しつつも恥ずかしくなり顔を下げて足早に教えられていた職員室へと急いだ。