俺は人と人の間をすり抜けながら、カウンターに座って、じっとステージ上を見つめているショートカットの女に近づく。


と。



「!」



さっきまでは気付かなかったが、赤い髪の男が脇に座っていたらしい。



そして今、美咲の肩を急に抱いたのだ。




―なんだ、アイツ…。




顔はまぁまぁ悪くはないが、軽そうな感じの男に、思わず眉間に皺が寄る。



やめてよ、というように、視線をステージに向けたまま、美咲は男の手を振り払う。



しかし、男は妙に馴れ馴れしく美咲に話しかけている。




―まさか、アイツじゃないだろうな。




どうか違っていて欲しいと願ってしまう。




「―美咲」




すぐ傍まで行って、思わず名前を呼ぶと、軽そうな男は俺を不愉快そうに睨みつけ、美咲もステージに向けっぱなしだった顔を少しだけこちらに傾けた。




迷惑そうな顔が、直ぐに驚愕の表情に変わり、目が見開かれる。



きつい化粧で、いつもより目がでかく見えて少し怖い。





「おにい、、、ちゃん…どうして…」



「え?!お兄ちゃん?美咲ちゃんのお兄ちゃん!?」




五月蝿い外野は無視して、俺は座っている美咲の腕を掴んだ。