「きゃー!!!!零ー!!!」
悲鳴ともとれる黄色い声が会場に響き渡る。
明らかに曲調が変化し、ステージにライトの光が散った。
爆発のような音がしたと同時に、スピーディーな曲が流れ出し、人々は思い思いに弾けている。
そんな中で俺は、明るいステージに立つDJを対峙するように、真っ直ぐ見つめた。
このクラブにDJが3人いる、として。
あとの2人を見なくとも。
恐らく、あの男だろう。
そう思ったのは、直感なんていうもんじゃない。
白っぽい金髪の、ひどく顔立ちの整った男。
高い背。
美咲じゃなくとも、彼を見た人間は皆虜になってしまうんじゃないだろうかと思うほど。
女が貢ぐ噂話に頷ける程。
男の俺から見ても、容姿端麗な奴だった。
他の2人が同レベルの容姿ならわからないが、こんなずばぬけたの、世界に2人といないのではないか。
―ありゃ、美咲の手には負えないわ。美咲が相手にされてなくて良かった。
安堵の溜め息を吐いてしまう俺は、妹に嫌われて仕方ないかもしれない。
そう苦笑した所で、バーカウンターに一人で座っている美咲を発見した。
―帰ろうと声を掛けよう。それから、余りに相手を高望みし過ぎていると忠告してやろう。
今はきっとスターに恋する少女のように、ただただ盲目的になっているだけだ。
目を覚ますのは、早い方がいい。