中に足を踏み入れた途端、余りの人の多さに驚く。
追いかけていた人物は、人ごみの中に紛れ込みそうだ。
「!」
慌てて追いかけようとするが。
「おにーさん。料金ちゃんと支払って、ね?」
体格の良い男が俺の肩をやんわりと掴んだ。
「あ、すいません。」
言われるまま、札を何枚か渡しながら、俺は尋ねる。
「あの、ちょっと訊きたいんですけど。。ここのDJって一人ですか?」
クラブなんて初体験な俺には、どういうシステムで店が回転しているのか全くわからなかった。
「何、おにーさん初めてなの?ここのDJは常任は2人か。あとはふらっとやってくるゲストがいるよ。今ちょうど居る時だから、それ合わせると3人てとこかな。」
「…そうですか。ありがとうございます。」
再入場の時に必要なリボンをポケットにしまい、御礼を言って奥に向かった。
身体に響くような重低音に構う事無く、俺は必死で首を回し、完璧見失ってしまった美咲を捜した。
今日は金曜日だから、美咲はきっと家には帰ってこないつもりだろう。
真実を確かめたかったし、美咲に大学のことをちゃんと訊かなければ、と思った。
「くそ、何処行った…」
人を掻き分けることに疲れてきた頃。
ちょうど、零時。
照明が、急に絞られ、観客が沸いた。