「美咲が?」




就職を4月に控え、バイトに明け暮れていた冬。



22時に帰宅し、遅い夕食に箸を付けたと同時に、母が心配そうな顔をして俺に悩みを打ち明けた。





「うん。。。最近、遅くまで帰ってこないのよ。金曜は家にすら寄らなくて、決まって朝帰りしてくるし。服装もどんどん派手になって…あの子、悪い友達でもできたのかしら。」




頬に手を当てて、溜め息を吐く母に、俺は首を傾げた。




「まぁ、あいつももう大学生だしね。受験の反動ではじけちゃったんじゃない?」




美咲は3個下の妹だった。


近頃は忙しくてお互い顔を合わせることはないが、そんなに心配しなくてもいいように思えた。





「でも…本人に訊いても、放っておいてよって言うだけで…」





「そういう時期もあるって。確かに女だから、ちょっと気をつけた方がいいのかもしれないけど。」





「―そうかしら。」





「彼氏でもできたんじゃないの?その内紹介しに家に連れてくるって。」




腑に落ちない顔をする母に、安心させるように言うと、やっとほっとしたような表情を見せた。





「そうかもしれないわね。」