暫く、重たい沈黙が続いた。
私は手持ち無沙汰になって、無意識に手にしていた缶のプルタブに指を引っ掛ける。
カコ、と音が響いた。
そのまま、いつもと同じ動作で口に持っていき―
「うぇっ!!!」
大豆臭さと不気味な程の甘さの融合が口腔内に広がり、吐き気を催す。
「ふ、ふ、藤代くん・・・これ、、、ちっとも、、、美味しくない・・・」
涙目になって、隣を見ると、足を組んだ藤代くんがしたり顔で笑っていた。
「知ってる。」
「!!!」
む、むかつく。
「10分前に戻って、藤代くんのコーヒーをコレに変えてやりたいわ」
苦々しげに呟けば、藤代くんは首を振った。
「無理だよ。俺、そんなことさせないもん。」
「だ、だったら、私の決断力を早める!」
そして、迷うことなく、ココアにする。
ミルクティーは暫く封印だ。
「もしも、戻れたら…」
「え?」
頬を膨らませる私を余所に、藤代くんは一瞬目を伏せてから再び夜景に向けた。
「もしも過去に戻れたら、…やり直したいことって、ある?」
呟くようにそう言った藤代くんの横顔は、まだ笑みが残っていたけれど、どこか切なげに見えた。