誰の目にも届かない物影へ行くと、シオン様は
更にその口元に作り笑いを浮かべた。


「ねぇキミ。なんで作り笑いってわかったの?」



なんだ、そんなことか。


「失礼ですが、シオン様と昔の私がよく似ているからです。」


「へぇ。僕とキミが?」


シオン様が挑戦的に笑う。

「はい。信頼できる友もいない。だからといって、家族に悩み事を話すこともできない。違いますか?」


「ッツ!」


シオン様の笑みが一瞬歪んだのを見逃さず、すぐさま続ける。


「そんな弱い自分を隠すために作り笑いを浮かべる。昔の私もそうでしたから。よく覚えています。」


「今は?」


シオン様が尋ねる。


「今は何故、あんなに無垢に、純粋に笑えるんだ?」


私は息を大きく吸ってから言った。


「私は、信頼できる友を見つけました。」


「じゃあ・・・」

シオン様は俯いたまま呟く。

「じゃあ僕は、俺はどうすればいいんだよ!
 信頼できる友なんかいない!王子だという立
 場以外、何の取り柄もない俺は!一体どうし
 らっ「私が!」


シオン様の悲痛な叫びを上回る大声で、話を遮った。


「私が!あなたの友になります。辛いときは肩を貸します。悩み事があればいくらでも聞きます!だから!」


一度言葉を切り、シオン様の手を握る。


「頼っていいんです!誰にだって、助けを求める権利はあります!」