「ゆーっうと」
後ろから背中を叩かれ
振り返ってみるといつもの顔
「なんだよ……美稀-ミキ-」
「んー?おはよっ」
「…………おぅ」
当時中2だった俺らはまだ幼かった
俺は相川美稀のことが好きだった
それは……純粋に。
まだ芸能界とかに興味なくて
一般人だったころ
確かに少し騒がれてて
ファンクラブとかあったけど
今程ではない
「ねー悠斗!学校まで競争だぁ!」
「はっ?」
「よーい、どん!」
「ちょっ………待てよ!」
美稀は……
とにかく明るくて元気で
可愛くてモテるけど
それに気取らない
友達も多くて俺もその一人だろう
性格もサバサバしてたな
話してるうちにいつの間にか
好きになり、気付けば隣にいた
中3になる前の春休み
どーせクラスも離れるだろうし
最近男子たちが美稀のこと噂してたし
俺は思い切って告白することにした
ダセーだろ?
でもそのくらい本気だったんだ
俺は恥ずかしい気持ちを抑えて
なるべくいつも通りの口調で言った
そうしたら、美稀は………
「………っ、……遅いよぉ」
泣きながらそう言った
これはどういう意味だ?
返事はどうなんだ?
聞こうとしたが、走り去ってしまい
その時は
まぁ、明日も会えるしいっか。
その程度にしか思っていなかった
次の日から2度と姿を
見せなくなるとは知らずに。
あの日から俺は狂った
隣にいた奴が急にいなくなり
「悠斗………」
俺を気遣ってモテるくせに
彼女を作らず付きっきりで
話相手になってくれた魁斗
この行き場のない気持ちを
「悠斗くーん♡」
どうも思っていない寄ってくるだけの
女達にぶつけた
あの日から、もしかしたら
俺の性格まで変わってしまったのかもしれない