「由奈は………」


「由奈と…………」




「由奈ってさ……」


















……………さっきから







呼び捨てに気付いてしまってから








悠斗くんの一言一言に集中してしまう











「由奈?」








「な、なに?」








「ボーっとしてる」













悠斗くんのせいだよ……








「呼び捨て………」






「え、もしかして嫌?」





「い、嫌とかそんなっ」






「アイツは名前呼びじゃん」





「あいつ?」








由奈って呼ぶ男子いたかな?






「さっきの幼馴染みくん」







あ、颯太しかいないね








「颯太のこと?」









ピクッ











悠斗くんの体が一瞬動いた














「俺の名前呼んで?」






「え?………悠斗くん」















「悠斗」









え?だから…悠斗くんだよね?










「ゆ、悠斗…………くん」











「だから、悠斗」











もしかして、









「………悠斗」







「よくできました」











そう言ってニヤッとした悠斗く……




悠斗に対して私はというと












「由奈、顔真っ赤(笑)」










「や、見ないでっ」











あまりにも恥ずかしくてカーテンを

閉めてしまった












「由奈は可愛いよ」






ドキッ











あ、またこれだ













「じゃ俺行くから、またな」








「またね、悠斗くん」




「だから、悠斗だって」



「ゆ、悠斗……」









私が名前で呼ぶと



少し顔が赤くなって微笑む彼








…………ずるいよ










「またな、由奈____」













ガララ












悠斗く……………悠斗が出ていってから




再び保険室内を静寂が包んだ















『由奈』








私をそう呼ぶ男の子












颯太だけだったのに。















今までは。






















もう一度襲ってきた眠気に勝てず












目を閉じる寸前














『由奈』
















私の名前を呼ぶ………颯太ではなく










悠斗の声が











頭から離れなかった理由が















その時の私にはまだわからなかった