「ヒロト……愛してる」
「あぁ。俺も」
シーンと静まり返った室内で
男と女が言葉を交わし、抱き合っていた
「………………」
「………………」
「…………はいカット!」
その言葉で静まり返っていた室内が
騒がしくなった
「今日はここまでだ!おつかれ!」
「はぁい、おつかれさまですぅっ」
監督の言葉に答える俺の隣にいる奴
「おつかれさまでした!」
俺も挨拶をし、撮影現場を後にしようと
「あ、悠斗くぅん待ってぇ!」
したんだが。
さっきから甘ったるい声を出す奴に
捕まってしまった
「ん?なんですか?」
ため息を飲み込んで一応笑顔で返事した
'この業界'で社交辞令は必要だから
「これからさ〜ホテル行こぉ♪」
………おぇ。
吐き気がする
いつの間にか2人きりになっていて
周りがいないことを利用して
自慢ですみたいな胸を俺の
腕に押し付けてくる
「俺、今から用事あるんで」
多分こめかみがピクッと動いたかもしれない
それでも笑顔で答えてやった
「そぉなのぉ?じゃぁ〜また今度ね☆」
そう言って自分の楽屋に帰っていく
「………はぁ。」
やっとつけたため息は今日
これで何度目だろう
今日は新ドラマの初撮影だった
結構急いでいたために丸一日
この仕事をしていた俺
それに共演者があんな奴じゃー
疲れが貯まるのも分かるだろ?
「もうこんな時間か……」
時計に目をやり、日付が変わるのを
その場で見届けた
今日は月曜日……てことは学校か。
面倒くせぇけど欠席日数やばいしな
まぁそこは何とかなるけど
とりあえず帰って寝るか………
そして俺が家について寝たのは
夜中の2時だった___